松山市 SDGs推進コンダクター養成事業をJICA四国、楽天がサポート

2022年12月23日


2022年8月、楽天の包括連携協定締結自治体である松山市から市の「SDGs推進コンダクター養成講座」にて、企業が何を目指して、どのようにSDGsに取り組んでいるかを、本講座に参加する大学生に伝える機会をいただきました。


今回の講座や本取り組みの今後の展望に関して、主催者である松山市総合政策部企画戦略課伊藤課長、参加された大学生の皆さん、そして登壇者であるJICA四国 愛媛県国際協力推進員大石様、楽天サステナビリティ部片山さんのお話しをお聞きしました。


松山市は、SDGsを推し進める旗振り役になる「松山市SDGs推進コンダクター」候補者を市内大学生から募集し、養成講座などにより認められた大学生に認定証を授与。認定された大学生は、市内のSDGsアライアンス校8校で児童と一緒に活動し、次代を担う世代からSDGsの輪を広げている。



SDGs達成に向け「知る」から「行動する」フェーズへ
ありそうでなかった大学生と小学生のコミュニティ形成


松山市総合政策部企画戦略課 SDGs推進担当課長 伊藤智祥氏

松山市として、コンダクター養成講座はどのような期待があって企画をされましたでしょうか


市民のSDGs認知度は高まってきたことから、SDGsの達成に向けた行動変容を促すため、次世代を担う大学生にSDGsを推進する旗振り役となってもらうことを計画しました。

コンダクターとなった大学生が市内の小学校で子どもたちにSDGsを伝え、一緒に学び、一人ひとりが自分のできる行動を考えることを通じて、持続可能な行動の輪が広がっていくことを期待しています。


今回の企画の中で印象的だったことを教えてください


私が本企画の中で一番印象的だったことは参加した大学生の変化です。
養成講座は3日間実施しましたが、最初は積極的に発言する学生は少なく、コンダクターとして小学校に派遣することに少し不安を感じていました。しかし、SDGsの基礎知識や楽天グループ様の取組、教育の心構えなど多岐にわたる内容を学ぶ中で変化が見られ、特に最終日に実施した派遣先小学校の教職員との意見交換では、積極的に質問するほか、子どもたちに伝えたい内容を提案するなど、学校での活動に向けて熱意の高まりを感じました。


派遣した小学校では、コンダクターたちが子どもたちとの活動に応じてSDGsの視点を分かりやすく伝えたり、子どもたち自らが考えられるように寄り添ったり、その地域の素晴らしさを自分の言葉で具体的に伝えたりするなど、子どもたちとの距離が縮まっていく様子が見られました。
休憩時間に子どもたちと一緒に楽しそうに遊んでいる姿や、終了時には別れを惜しんでいる姿を見ると、大学生と小学生という、ありそうでなかなかなかった関係性が形成され、担当の先生にも非常に喜んでもらえたので今後の展開に可能性を感じています。


今後、松山市はSDGsをどのように推進していかれますか?


今年度認定したコンダクターは、複数年活動することを想定しています。今後は、知識のアップデートを図るとともに、各小学校でできたSDGs活動の輪を中学校や地域にも広げていきたいと考えています。
また、楽天グループ様にも入会いただいている産・学・民・官・金などで組織するプラットフォーム「松山市SDGs推進協議会」では、松山市教育委員会と連携し、児童や生徒に企業・団体が実施するSDGsの取組などを知ってもらう授業を実施しています。今後も産官学連携を推進し、地域が一体となった良質な教育環境の整備することで、持続可能な社会を実現したいと考えています。


深刻な問題が背景にあるからこそ「楽しく」「前向きに」を大事に伝えていく

養成講座に参加した市内の大学生の皆さん

今回の企画ではSDGsに高い関心を持ち、受動的に学ぶだけではなく能動的に発信する側にもなりたいという想いをもった約40人の市内大学生が参加しました。参加した学生の皆様に感想を伺いました。


講座を通じてどんなことを学べましたか?


  • 大学の教授や企業に勤める方、海外での経験がある方などのお話は多くの学びになり、SDGsが関わる物事は限りがないほどに沢山あると実感しました。特に印象に残った事は、持続可能な生産・消費を考える際に「楽しい」を大事にするということです。SDGsの背景には深刻な問題があると分かっていますが、できる限り前向きな姿勢で取り組んでいくことが目標達成につながると思いました。


  • 養成講座を受講したことで、一人ひとりができることをすることによって持続可能な社会の実現に貢献できることが改めてわかりました。例えば、海洋ごみ問題、食品ロスなどです。大きな問題だけに目を向けるのではなく、自分の目標や実現させたい世界を考え、身近なところから行動することが必要だと強く感じました。


今後SDGsに関してトライしたいことはありますか?


  • 様々な場面でSDGs活動ができれば、もっとSDGsの認知度も高くなり、意識して取り組む人が増え、その結果問題になっていることが解消されていくのではないかと思いました。そのような行動一つ一つが困っている人たちを助けることにつながっているということも伝えていきたいと思います。


  • 今後は、座学としてSDGsを教えるだけでなく、実際の活動を通して、体験的に学べるような活動にトライしたいです。


  • 書籍等によって情報を吸収するだけではなく、体験を通じた多方向のインプットを得られる機会などに参加し、学んだ内容を対外的に発信したり行動に移したりしていきたいです。


「持続可能」が世代を超えてジブンゴトとして日常化される社会を

JICA四国・愛媛県国際協力推進員・大石紗己氏


JICAと楽天は2021年に包括連携協定を結んでおり、サステナブルな消費やライフスタイルの訴求を通じたSDGsの理解促進や行動変容の推進に関する取組を目的の1つに掲げています。


次世代に向けたSDGsに関する講座の意義はどのような点にあると考えられていますか?


これまでには認知度の低かった「持続可能」という考え方が少しずつ広まる中で、若者たちが主体的に学びジブンゴトとして考えることが日常化される社会を期待します。そのような社会になるためには、次世代のリーダーを育成し、彼らが身近な人たちへ持続可能な世界を作っていく大切さ伝えていく必要があると思います。次世代の皆さんへの講座は、社会的インパクトとして、また次世代リーダーたちへの個人的インパクトとしても良い影響を与え、持続可能な社会・地域と人材育成へもつながるといった意義があると考えています。


今回の講座を通して強く感じられたことを教えてください


今回は大学生を対象とした養成講座に関わり、SDGsへの理解を深めていくだけではなく、次世代である大学生へ伝え、その大学生がまた次の世代である小学生へ伝えていくというような人から人への持続可能性の継承というものを感じました。時代の流れやテクノロジーの発展により、どのような取り組みができるかは変化していくと思います。それでも自分が、自分や次世代の未来を想う気持ちは変わらない、それよりもいっそう強い思いになっていくのではないかという気持ちになりました。


コンダクターになった大学生の皆さんへの期待は?


今回学んだことを柔軟に活用し、自分の好きなことや強みをいかした自分らしさのある持続可能性を考え、小学生の皆さんと取り組んでほしいと思います。日本も国際社会の一員としてSDGs達成への貢献を目指しておりますが、さまざまな課題は日本だけの問題ではありません。お互いの国が関わりあっているそれらの課題を一緒に解決していくものです。その点において、国際社会や国際理解へも視野を広げ学んでいただき、それらを次世代に伝えてくれる存在になってくれることを期待しています。


楽天グループの考えるサステナブルな生産と消費


楽天グルーブ㈱サステナビリティ部サステナブルビジネスグループ 片山 佳奈子

楽天グループは、主力ビジネスであるインターネットショッピング事業を通じてSDGsの目標12「つくる責任つかう責任(持続可能な消費と生産のパターンを確保する)」実現に貢献していきたいという想いから、EARTH MALL with Rakutenというサイトでサステナブルな商品を紹介していますが、このサイトでの商品選定の際「社会課題を明示していること。」「客観的な事実と根拠があること。」を大切にしています。サステナブルといわれる商品は特定の環境課題や児童労働等の人権問題など何かしらの社会課題に真摯に向き合っています。


今回の養成講座で特に伝えたかったことを教えてください


コンダクターとして小学生に授業をする大学生が「もの」を教材にサステナビリティを話す参考となるよう、どういった「もの」がサステナブルと言えるのか、というサステナブルな生産と消費についての楽天の考えをお話ししました。心掛けたのは、特定のキーワードを覚えてもらうのではなく、本当に「サステナブルな」商品を判断する根拠を理解してもらうことです。


「もの」の生産、製造、輸送や販売、廃棄といった「背景」や、使用に関係する社会・経済・環境条件を客観的に見て、商品がそれらとどのように向き合っているかという事実と根拠を見ると、本当にサステナブルな「もの」かどうかを知ることができます。地域の商品であれば、背景を知ることは、地域の社会課題を知り、どのように向き合うことができるかを知ることにもなります。商品そのものに加えて、作り手の想いや商品の「背景」にあるストーリーも楽しんでもらいたいということもお伝えしました。


持続可能な開発のための教育の課題をどのように考えていますか?


今回受講した学生からの反響で印象的だったのは、サステナブル、オーガニック、認証、地産地消という言葉を日常生活や学校教育で知っていたが、それがなぜ良いのか、モノの背景にある社会・経済・環境課題に根拠があることを初めて知ったという声でした。
また、企業、特に普段からサービスを利用している楽天も、そのサービスの背景で社会のサステナビリティを考慮し取り組んでいることも初めて知ったという声もありました。

サステナビリティという言葉やSDGsアイコンの認知度は高くなってきていますが、それぞれの生活者が消費を通じて貢献しようとするには、社会課題の理解やどのように製品やサービスが関わっているかという根拠を知ってもらう取組も欠かせないことを感じました。


コンダクターになった大学生の皆さんへの期待は?


この講座で出会った人との関係を活かし続けるとともに、より多くの人々を巻き込んでいっていただくことを期待しています。この講座には様々な大学、楽天のような民間企業やJICA、実習先の先生や児童、住民の方々など、多くの方が関わっています。松山市に限らず、現在の社会課題や将来の社会課題の多くは、個々人だけでは解決が難しいものですが、ここで得た様々な分野の専門性や視点、取り組み方をもって、多様な人々を巻き込むことで常識を覆すイノベーションを生み、松山市ひいては日本や世界の持続的な繁栄を実現いただくことを期待しています。

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