物価高を食品ロス削減によって対策する実証実験を実施

2024年06月19日


消費者庁の令和4年度物価高対策に資する食品ロス削減実証業務の一環で楽天西友ネットスーパーと西友が連携し、通常、賞味・消費期限切れで食品が廃棄されてしまう実態を改善すべく、賞味・消費期限切れ間近の食品の安全性等を広く啓発し、あわせて期限切れになる前に見切り販売を行うことで物価高騰の対策を小売業と家庭で一体となって講じる実証実験を実施した。


背景

賞味・消費期限当日まで期間が近づいた商品は、まだ期間が残っているにもかかわらず、消費者意識を勘案し、廃棄されており、これらの廃棄処理コストは商品価格に転嫁されていると考えられている。今回、賞味・消費期限間近の商品の安全性等をスーパーが適切に訴求し、消費者がこれを理解し、見切り品の販売がより一般化すれば、食品ロス削減対策と物価高対策が両立できるのではないかという仮説をもとに本実証を行った。


取り組み内容

【実証設計】

楽天西友ネットスーパーを実証フィールドとして、賞味・消費期限の正しい理解促進と賞味・消費期限に準じた値下げ販売・ポイント還元販売の実証を実施し、食品ロスの削減および物価高への対策効果を測定する実証実験を行った。


賞味・消費期限の正しい理解促進に向けた広報による意識変容効果の分析や、消費者の購買意向の調査については、楽天西友ネットスーパーのユーザーを対象としたインターネットアンケートを実施した。値下げ販売・ポイント還元販売の実証による食品ロスの削減および物価高への対策効果は、ネットスーパーの配送センター別の購買データ・廃棄データを用いて分析を行った。


また、ネットスーパーの環境下では実証が困難であった賞味・消費期限の短い品目の見切り販売を株式会社西友の協力の下、都内6店舗にて上記同様に実施した。



<実証概要①:ネットスーパー>
1. 統制群
     ・実施期間:2023年9月18日(月)から10月1日(日)
     ・実施内容:通常通り、定価販売を実施。対比の為のデータのみ抽出。
2. 実験群①
     ・実施期間:2023年10月2日(月)から10月15日(日)
     ・実施内容:賞味・消費期限間近の商品の値下げ販売/賞味・消費期限の理解促進に関する啓発
3. 実験群②
     ・実施期間:2023年10月16日(月)から10月29日(日)
     ・実施内容:賞味・消費期限間近の商品にポイントの還元/賞味・消費期限の理解促進に関する啓発


<実証概要②:西友都内6店舗>
1. 実施期間
     2023年10月2日(月)から10月31日(火)
2. 対象店舗
     ひばりが丘団地/ひばりが丘/LIVIN光が丘/国領/調布/吉祥寺



実施効果

・ネットスーパーにおける実証実験では、値下げ販売の実施期間(実験群①、10/2~10/15)には計50品目、商品点数では全商品の1.5%に当たる商品について値下げ販売を行い、ポイント還元販売の実施期間(実験群②、10/16~10/29)には計40品目、商品点数では全商品の0.4%に当たる商品についてポイント還元販売を実施した。


結果として、実験群①と②のいずれも統制群より廃棄点数が減少しており、実験群①では54%、実験群②では26%の食品が食品廃棄物となることを回避した※。消費者は73万円分の支出の抑制効果を得られた一方、ネットスーパーにとっての費用対効果(値下げ等による収入減に対する売り切りで得られた金銭的メリット)は375%と、ネットスーパーにとっても金銭的な負担とならない取り組みであることが示唆された。


※各実験群で見切り販売の対象となった商品数や、実際に見切り販売された品目の構成が異なるため、廃棄削減効果を単純に比較することは難しい点に留意が必要である。(本結果をもとに、「値下げ販売の方がポイント還元販売よりも廃棄削減効果が高い」と結論付けるのは困難である。)


・ネットスーパー内に特設のランディングページ(以降、LP)を設置し、期限間近の食品の購買に関する意識啓発の検証を行った。アンケートの結果、主な介入ターゲットである「買い物時に賞味・消費期限を意識しているが、見切り品の購買意向が低い」層について、キャンペーンを認知(LPを確認)することで購買意向が高くなる結果が確認された。


・スーパーの実店舗(全6店舗)を対象に、賞味・消費期限の正しい理解促進の啓発、賞味・消費期限に準じた値下げ販売を実施した。利用者へのアンケートの結果、回答者1人あたり約237円の支出の抑制効果が推計され、店舗の平均利用客数を用いて拡大推計すると、期間中におよそ137万円の支出の抑制効果が得られたものと推測された。


今後の展開

消費者庁を通じ、実証の効果を小売店にフィードバックするとともに楽天西友ネットスーパーでは賞味・消費期限間近の商品を自動的に制御し、見切り販売を行うシステムの検討をしています。

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