【開催レポート】福井県内エース職員と楽天のマーケティングデータ活用に関する座談会を実施

2024年07月19日


2024年5月16日、福井県福井市の福井市地域交流プラザにて、福井県内で活躍するエース職員5名と楽天グループ株式会社(以下、「楽天」)の地域創生事業メンバーによる座談会が開催された。

今年2月に、福井県庁のエネルギー課主任の岩井渉さんが、楽天社員向けの勉強会で講師を務めたのがきっかけとなり、座談会開催の運びとなった。 


今回の座談会は、前半が楽天の地域創生への取り組みの説明、後半はその内容に関するディスカッションという流れで進められた。具体的には、楽天が提供している地域DX推進のためのデータ活用ソリューション「RakuDash(ラクダッシュ)」について、データの活用方法についての疑問や要望、日頃抱えている悩みなど、熱量の高いさまざまな意見が交わされた。 

※記事中の所属・役職は取材当時のものです。


座談会参加職員の紹介 



岩井 渉さん(福井県庁 エネルギー課 主任) 

カーボンニュートラルディレクター(課長級相当)に38歳で就任 

「昨年度までカーボンニュートラルディレクターを務めておりまして、現在も引き続き、カーボンニュートラル関連の業務を担当しています。最近ではデータに基づいたEV(電気自動車)の導入支援を立案したところで、データ活用には非常に興味を持っています」 




小玉 悠太郎さん(福井県坂井市 移住定住推進課/企画政策課ふるさと納税推進室 主査) 

「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2023」受賞 

「坂井市で9年間ふるさと納税を担当しております。昨年からは二つ目の部署である移住定住推進課を兼務しており、坂井市に住んでいる若者に、愛着を持って坂井市に住み続ける選択をしていただくための定住促進をメインで担当しています」 




出蔵 健至さん(福井県福井市 観光振興課 副主幹) 

「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022」受賞 

「私は自称“はみだし公務員”として本業の仕事のほかに、業務外で街に出るという活動もしています。所属部署ではコンテンツツーリズムや観光振興の分野を担当していますが、デジタル大好き、課題解決大好き、効率化大好きな人間でして、日頃からデータ分析が大好物です」 




寺井 優介さん(福井県庁 未来創造部 チャレンジ応援ディレクター) 

「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022」受賞  

「福井県庁のチャレンジ応援ディレクターとして、福井県で日々何かやりたいと考えている若者たちを個別にサポートしています。他にも、エキセントリック・カレッジふくいの統括ディレクター、福井県若者情報発信局(FWI)というアプリの事務局長など、県内でさまざまな事業に関わっています」  




中村 広花さん(福井県高浜町 産業振興課 主事) 

「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2023」受賞 

「福井県の一番西にある高浜町で、自称“とんがり公務員”としてやらせてもらっています。私が所属している産業振興課では、農林水産・商工・観光のまちづくり全てを網羅しています。私自身の担当は水産がメインですが商工や観光にも関わっており、今は新幹線で来てもらうための工夫なども模索しているところです」 



EC、ふるさと納税、宿泊の三つのデータが揃う最強ツール【RakuDash】 

RakuDash(ラクダッシュ)は、地方自治体職員の方たちが施策立案や振り返りに必要なデータを”ラク”に出して事業のPDCAサイクルを”ダッシュ”させていくことを目的とした分析ツールの名称だ。

楽天IDに紐づくため、楽天市場、楽天トラベル、楽天ふるさと納税をはじめとする複数のサービスにまたがる広いユーザー理解が可能で、消費者の行動をベースにしているマーケティングデータ(個人を特定しないかたちで統計的に集計されたデータ)である点も特徴となっている。さらにデータは毎月更新されていくので、リアルタイムで地域の状態を把握することができる。 


そんなRakuDashについて、福井県坂井市職員の小玉悠太郎さんは、長年ふるさと納税に関わってきた立場からリアルな感想を述べてくれた。 



「実は僕はデータが得意ではなくて……。市場調査はしますが、数字はほとんど見ていません。そんな中で、RakuDashのクロス分析はとてもいいと思いました。ふるさと納税に関わっている職員は『ふるさと納税で知ってもらえたから、次は観光だよね』とか、『次は直接買ってもらいたいよね』ってみんな言うんですよ。でも実際のところ、その先までユーザーを追えるデータがなくて。でもRakuDashなら、ほぼ100%の確率で追える。しかもECとふるさと納税と観光の三つのデータを持っているのはおそらく楽天さんだけ。本当に最強のツールだと思っています」 


この発言に大きくうなずき、福井市職員の出蔵健至さんは次のように意見を述べた。 



「私のように自治体の観光を担当している人に共通する三つの課題は、EC、集客、ファンディングです。この三つを楽天さんは押さえている点がとても強い。それと、楽天さんなりに関係人口を換算する独自のロジックを作っていただいて、これらのデータを数値化し、見える化をしていただけると、めちゃめちゃ参考にすると思います。必ずしも『観光が弱いからどうにかしなさい』ではなくて、その自治体の強み・弱みを含めた特徴を生かしながら今後どうしていくべきか?という提案や発信をしてほしいですね」 


これに対して、RakuDashの具体的な活用イメージがわかないという声も寄せられた。 


「観光で来てくれた人や、ふるさと納税してくれた人って、その理由は初回の人と2〜3回目の人とでは違うはず。私が知りたいのはそういう『なぜ?』の部分なんです。それがわかれば、関係人口を増やすことや、定住人口にボトムアップするための糸口が見えてくると思っています。ユーザーのクチコミやレビューにはいろんなヒントがあるので、データを閲覧するだけではなく、そのような『なぜ?』がわかる要素がRakuDashにもあるといいなと思います」と、高浜町職員の中村広花さんは正直な胸の内を吐露。 



さらに、福井県庁の寺井優介さんもこう続ける。 

「僕と中村さんはアンケートの集計結果を渡されても、数字は見ずに最後の自由記入欄を見るタイプ。そこにユーザーの方たちの本当の言葉があると思っているんです。だからデータ分析においては全くエース級ではありませんが、僕たちのような行政職員に楽天さんがどうアプローチしてくれるのかを、今期待しています」 



なお、RakuDashのダッシュボード画面内には「クロスセル」という項目があり、そこではEC、宿泊、ふるさと納税という各領域を掛け合わせて関係性の深さを分析していくことも可能だ。

「その結果、重複利用しているユーザーがほとんどいないことが明らかになる自治体も多く、ふるさと納税で寄付をした方が、その先どうやって地域との関係性を深めていけるか、それにはどのような方法があるのかという解決策をソリューションとして提供しながら、自治体さまと一緒に考えていけたらと思います」と、楽天地域創生事業の中川は補足を述べた。 


ECや宿泊ユーザーにふるさと納税をしてもらうためのアプローチ方法はあるのか?  

ここで、坂井市職員の小玉さんがRakuDashに大きな可能性を感じつつもデータの活用方法で知りたいことがあると質問を投げかけた。 


「ふるさと納税をした人に対しては、市からメルマガやアンケートをメールで送るなどのアプローチができますよね。それに対して、宿泊予約や楽天市場は申し込みや注文の際のユーザーデータが自治体を経由しないので、それができません。その人たちに対して何かアプローチできる手法はありますか?ふるさと納税をしたユーザーに購買や宿泊を紹介することはできても、その逆はできないのでしょうか?」 


これに対して「ふるさと納税の返礼品に宿泊クーポンを加える自治体さんが増えています」と、ふるさと納税のユーザーへの観光面でのアプローチ方法を楽天の中川が解説。

「ふるさと納税をきっかけに宿泊クーポンに納税してもらい、観光に来ていただくことで関係性が深くなっていくというケースですね」。次に、ふるさと納税とECをつなげる手法として「プロモーション費用など別途予算が発生する案件になりますが、例えば産品購入されている方のユーザー情報だけを抽出して、その方たちにふるさと納税の告知をすることもできます」。 


楽天ふるさと納税と楽天トラベルの重複利用ユーザーを動かすには? 

ここで、福井市の出蔵さんから「ふるさと納税での楽天トラベルクーポン返礼品」の事例における悩みが共有された。

福井市では現在、楽天ふるさと納税内で福井への観光を促すキャンペーンを実施中で、福井市公式観光サイト内各所に楽天トラベルのキャンペーンへ遷移するバナーを設置し、日々定点観測をしている。

そんな中「キャンペーンサイトへのバナークリックの数字が伸びない。もしかしたらふるさと納税と自治体観光サイトではターゲット層が乖離しているのではないか?という仮説を持つようになったほどです」と出蔵さん。

つまり、旅行が趣味の人とふるさと納税が趣味の人とは、あまり重なっていない可能性があるのではという。 


これに対して楽天の中川は、愛媛県松山市の成功事例を紹介。

松山市はもともと、ふるさと納税の規模がそれなりにあり、道後温泉をはじめ観光資源にも恵まれている。楽天トラベルページ内でふるさと納税を紹介し、ふるさと納税の増加により宿泊予約も増やすという施策を昨年実施したところ、結果を残すことができたのだ。

「我々の仮説としては、むしろ観光とふるさと納税のユーザーは親和性が高く、観光入り口の方はふるさと納税をしてくれやすいというのが実績としてありますね」。 



「福井市の場合、自治体観光サイトユーザーは類似の宿泊サイトには飛んでいくけれど、ふるさと納税には飛ばないんですよ。越前ガニについてめちゃくちゃ調べているのに、ふるさと納税のお得なクーポンはなぜ使われないんだろう?と思ってしまいます」と再び出蔵さん。  


楽天ふるさと納税内における観光の返礼品は、現状まだ全体に占める割合は大きくない。

「ふるさと納税にお得な宿泊の返礼品があることが、それほど認知されていないことも要因として考えられます。それは弊社側の課題でもあるものの、まだ伸びしろのある部分だと見ています」と、楽天の中川は今後伸びていく可能性を示唆した。 


RakuDash以外にも取得・分析可能なデータはある? 

「私からは、カーボンニュートラル関連の質問をさせてもらえたら」と口を開いたのは、福井県庁でカーボンニュートラルディレクターを務めた経験のある岩井渉さんだ。

「RakuDashのツールとは別のデータになると思いますが、福井県内における荷物の再配達が環境におよぼす影響が気になっています。再配達を減らしていくのが福井県としては必要なのでは、と思っているところなのですが、それがわかるようなデータを楽天さんはお持ちだったりするのでしょうか?」。 



これに対し、楽天の中川は「楽天市場で注文された荷物の配送情報は、配送業者を問わず楽天側が全部持っていますし、オープンになっているデータもあります。環境省からの働きかけがあり、CO2削減のための取り組みとして、実証実験も実施済みです。結果として、意外かもしれませんが再配達はそんなに多くないんですよ。宅配ボックスの普及など、受け取り方法の幅が広がっていることも要因となっていると考えられます」と解説。

さらに「楽天ではRakuDashの他にも様々なデータを持っていますので、それらのデータも活用しながら自治体様の課題解決のためのアプローチをご提案できる存在でありたいと考えています」と締めくくった。 


座談会を終えて〜それぞれの感想 

出蔵さん 

「私自身、日頃からデータを活用する側なので、どちらかというと楽天さん側に近い「伴走支援する側」の意識でいたのだとわかりました。やはり求められているのは伴走支援ができる業者と数字の根拠、この二つが常に役所では求められているので、そこを突き詰めていただけると嬉しいです」 


岩井さん 

「私はどちらかというと、データを使ってどういう政策を作っていくかに一番関心があります。今回の座談会を経て、楽天さんが今後どのような地方創生のアプローチをされていくのか興味を持ちましたので、これからもそのお取り組みに注目していきたいと思います」 


小玉さん 

「楽天さんの持つデータの価値は計り知れないものがあり、それを生かすも殺すも我々次第だと思いました。今回このような場を設けていただき、私たち現場職員の声をヒアリングしていただけたのは、本当にありがたいなと思います」 


寺井さん 

「”データ苦手班”班長の寺井です。楽天さんのデータが、すごく価値のあるデータなのはよく分かるんです。だからこそ、このデータをいかにハートフルにするか、いかに活用するかってことが大事だと思っていて、それには僕たち行政職員の力だけでは難しいと感じます。でも、皆さんの力をお借りすればそれが可能だと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします」 


中村さん 

「”データ苦手班”副班長です。今回の座談会ではデータが苦手な人と得意な人とが両方揃っていたので、人選がよかったなと思います。相変わらずデータは苦手なままですが興味や知識は深まったので、第1ステップが今日始まったのかなと感じました。これから社会的インパクトの要素も組み込めると、よりハートフルなものになると思いますので、これで終わりではなく、今後も続けていきたいです」 


福井県内のエース職員の方々と楽天地域創生事業メンバーによる座談会の様子 


関係人口の創出やデータ活用に関してご興味のある自治体様へ 

楽天では、楽天IDに基づき可視化された、地域外に在住するサービス利用者をオンライン関係人口と定義しています。

RakuDashを導入し、物産(楽天市場)・観光(楽天トラベル)・ふるさと納税(楽天ふるさと納税)の3領域に関わるマーケティングデータを分析および利活用することで、自地域がどのような属性の方々とつながりを有しているのか、経年でどのように変化しているのか、地域の稼ぐ力にどのように貢献しているのか、などの多様な視点から定量的に動向を把握することができます。

 RakuDashをはじめ地域DX推進のためのデータ活用ソリューションの内容についてさらに詳しく知りたい方、今後の取り組みとしてご興味がある方は、お気軽に下記のお問い合わせフォームよりご連絡ください。 


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