ネットショップのギフト企画提案に挑戦!地元EC企業の特別授業で商業高校の学びをもっと面白く、実践の場へ

2023年03月29日


2022年3月、楽天グループと神奈川県は包括連携協定を締結し、未病改善やSDGsの推進、教育分野等で協働することを発表した。教育分野では県内の商業高校を対象に、Eコマースやマーケティングノウハウの実践的な知識を学び、商品開発やネットショップでの実践販売の機会づくりを目指している。


今回の取り組みに至った背景はコロナ禍だ。以前、商業高校では生徒が商品開発したオリジナル商品や学校で採れた野菜を対面で販売していたが、コロナ禍により実施できない状況があり、ネットショップでの販売ニーズが強くなったのがきっかけだった。


神奈川県 政策局 いのち・未来戦略本部室 川口氏は次のように話した。


左から神奈川県 政策局 いのち・未来戦略本部室 川口氏 栗山氏


「ネットショップでただ販売するだけでなく、楽天グループとの連携を通じて、生徒がEC事業者の方から直接ECの知識やノウハウを学ぶ機会を作りたいと思いました。そのようなことが商業高校で学べるんだ、ということが全国に伝われば、神奈川県独自の魅力作りにも繋がると考えました。」


神奈川県の思いに共感し講師を担当したのは、神奈川県相模原市でオリジナルパジャマを製造・販売をしている株式会社フレックス。EC業界の黎明期である2001年からご夫婦でネットショップの事業を開始し、現在では30名以上のスタッフとともに、全国のお客様に日々商品を届けている。お店の屋号は「パジャマ屋IZUMM」。生地や着心地にとことんこだわり、お客様のどんな小さなお悩みにも真摯に向き合い、何度も改良を重ねられているオリジナルパジャマは、自分用だけでなく、父の日や敬老の日など、大切な方への贈り物としても非常に人気がある。


大切な贈り物をする際に、実際に商品を目で見て選べないネットショップはハードルが高いように感じるが、お客様が不安に感じる要素を払拭する独自のおもてなし戦略で、お店のレビューは高評価を獲得し続けている。何度もリピートする、根強いファンが多いのも特徴だ。


パジャマ屋IZUMMの楽天市場トップページ


授業は、神奈川県立商業高校3校 (商工高等学校、小田原東高等学校、平塚農商高等学校)の3年生を対象に実施。

生徒たちは最終授業で、パジャマ屋IZUMMの企画担当者として、おじいちゃん・おばあちゃん向けのギフト企画を自分たちで考えてグループでプレゼンテーションを行うことを目指し、ネットショップの販促企画を考えるうえで大切な知識を学んだ。 


生徒によるプレゼンテーションの様子


授業の中では、身の回りにあるお店に足を運んでネットショップとの違いを観察することや、パジャマ屋IZUMMの商品を直接触りながら商品開発のポイントやこだわりを学んだ。敬老の日の特集ページを見ながら、ネットショップ上でどんな写真や言葉を使って商品の特徴を説明するか、自分たちだったらどのように表現するかアイデアを出した。


印象的だったのは、生徒がパジャマ屋IZUMMで商品購入の疑似体験をしたこと。注文から発送までのコミュニケーションやパジャマ屋流のおもてなしを体験した高校生は、「綺麗にラッピングされている商品と手書きのメッセージが届きました。とても感謝の気持ちが詰まっていることが分かりました。」「ダンボールを開けた瞬間のサプライズ感が大事だと思った。開けた瞬間から笑顔になれるラッピングを自分でも考えたい。」などの感想があり、ECならではの買い物体験をお客様の立場で実感できたようだ。

高校生に伝えたいことは「働く」ということと「ECの可能性」

今回のプロジェクトに賛同してくれた背景には、株式会社フレックスが大切にしている次の世代に対する強い思いがあった。株式会社フレックス 代表取締役の熊坂さんは次のように理由を話してくれた。


株式会社フレックス  代表取締役 熊坂泉さん


「まずは、企業として、次の世代を担う人たちを育てることが一番のミッションだと思っているので、普段から地元中学校の職場体験の受け入れなどを行っていることもあり、今回のお話を頂いた時は、是非!とお返事をしました。


今回のプログラムで高校生の皆さんに伝えたいと思っていたことは、働くってどういうこと?ということと、ECの可能性はまだまだすっごくあるんだよ!ということですね。


働くっていうことでいうと、楽しいことも難しいことも両方知って欲しかったです。いつもお父さん、お母さんがお仕事大変そうにしているのには理由があるんだよ、ということと、仕事ってやらされていることをやるだけじゃつまんないけど、自分の発想とかアイデアをどうやって伝えるかということが一番大事で、一番楽しいことなんだよ!っていうことを感じて欲しかったです。企画を考えて、グループで役割分担しながらプレゼンテーションの準備をするのは簡単ではなかったと思うけど、大変さも楽しさも、両方感じてもらえていたらなと思います。


ECの可能性でいうと、普段高校生の皆さんもコンビニでものを買ったりすると思うけど、ネットで購入するってどういうことなの?どんな風にネット上だけで商品の価値を表現するの?っていうことを考えてほしかったんです。ECだったら全国のお客様に、商品をただ並べるんじゃなくって、自分たちがなぜ作っているかという思いを商品にのせられる。お客様に直接お伝えして反応が返ってくると、今度は商品を作る意味がもっと生まれてくる。ECで表現出来る人、伝えられる人がもっと増えれば、ECの買い物体験がもっともっと楽しくなる。そんなECの可能性を伝えて、ECをやりたい人を増やしたいなっていつも考えています。


それと、社会の中で働くということは、誰かの役に立つこと、笑顔にすること。それが対価になってお給料になるんだよ。と言うことを伝えられていたら嬉しいです。


あとは今回、プロジェクトを担当してくれたのが新卒で今年入社したばかりの菅原なんですけど、この取り組みそのものが、私たち企業としては、新人教育に最高!だと思いました。」


株式会社フレックス マーケティング部 エバンジェリストグループ 菅原さん


「そもそも入社したばかりで、会社のことも仕事のこともわからない中でしたが、高校生に伝えるためには自分もきちんと理解しないといけないので、資料の準備をしながら会社のことも商品のことも理解していきました。特にアンケートやプレゼン資料のブラッシュアップポイントを全員にフィードバックをしたのですが、それが自分にとっては一番良い経験になりました。そして何より一番嬉しかったのは、将来フレックスで働きたいですって生徒さんが言ってくれたことですね。」

2022年度の取り組みは、次の展開へ

前列左 神奈川県 教育委員会 教育局指導部 高校教育課 安井先生


神奈川県 教育委員会 教育局指導部 高校教育課 安井先生は、今年の取り組みを振り返って次のようにコメントした。
「生徒はいくつかの課題を解決するために、授業で学んだ分析方法などを活かしながら、分析し、課題を解決するアイデアを発表しました。学校で学んだ知識が活かされる場面があって、生徒も今までの学びを振り返ることができました。
教員としても、改めて社会で求められている資質や能力がどういうものか知ることができました。また、地域や企業の協力で学ぶ機会を得て、実践的な活動ができたことに感謝しています。今後は企業とコラボで、もしくは自校で商品開発をして、ネットショップで販売をしていくとともに、高校生の学びの場がもっと面白くなるような取り組みに発展させていけるといいなと思います。」



包括連携協定締結からちょうど1年が経過し、2023年度も神奈川県と楽天で協業しながら、さらに実践の学びの場をつくっていくことが決定している。こういった取り組みが全国に広がっていくことによって、ネットショップそのものの在り方や、日本のお買いもの文化に新しい価値をつくっていく次の世代が生まれてくることを期待して、これからも様々な地域やパートナーの皆さんとご一緒していきたい。

関連記事

おすすめコンテンツ